学会・留学報告

国立がん研究センター東病院 消化管内科での3年間を終えて(重橋 周先生)

留学期間 2022~2025年

長崎大学病院 消化器内科 重橋 周

この度、3年間の国立がん研究センター東病院 消化管内科での国内留学を終え、長崎大学消化器内科に帰局いたしました重橋です。この度は留学便りを書かせていただく機会をいただきましたので、国立がん研究センター東病院でのレジデント生活、そして自身が得られた経験についてご報告させていただきます。

 

国立がん研究センター東病院は、日本におけるがん医療の中核を担う、世界でも屈指のがん治療施設として先進的ながん診療を提供しています。特に消化器がん領域においては、多くの世界トップランカーの先生が在籍しており、最先端の治療開発や臨床研究が日々行われており、常に進化し続けるがん医療の最前線を牽引しています。

 

がんセンター東病院の消化管内科レジデントでの研修の最大の特長は、圧倒的な症例数と主体的な診療です。全国各地から治験患者を含む多くの患者さんが集まるため、非常に多様な症例を経験できます。レジデント一人ひとりが主担当医として、責任を持って診断・治療方針の決定から実施、緩和ケアまで、一貫して患者さんの診療にあたります。チーム医療の中核として、多職種カンファレンスにおいてもレジデントが積極的に司会や運営を務め、プレゼンテーション能力や調整能力も実践の中で鍛えられます。また、「学びたいことは私仕様で」という東病院の柔軟なローテーション制度も大きな魅力です。消化管内科での研修を中心にしつつ、自身の興味や将来のキャリアプランに合わせて、最大1年間、他科でのローテーションが可能です。病理診断科でがんの病理を深く学んだり、先端医療開発センターで臨床研究を経験したり、腫瘍内科や血液腫瘍科でがん薬物療法の症例経験を積んだり、あるいは緩和医療科や精神腫瘍科で支持療法を学ぶなど、個々の目標に応じた研修内容をカスタマイズできる環境が整っています。

 

私自身の症例経験に関しては、主担当医として診療にあたった症例は、退院サマリ数として1036件に及びました。症例数としては食道癌: 204症例、胃癌: 107症例、大腸癌: 123症例、その他消化管: 42症例(小腸癌 10例, 虫垂癌 6例, 肛門管癌 4例, GIST 2例, NEC 11例, NET 6例)、肝胆膵: 肝細胞癌 12症例, 胆道癌 10症例, 膵癌 36症例、と多くの症例を経験することができました。様々な化学療法の有害事象も経験でき、有害事象に対しての対応も教科書的な知識ではなく実経験として得ることができました。

 

さらに、日常診療に加え、研究活動や執筆活動にも取り組む機会をいただきました。胃癌治療ガイドライン第7版の作成にも携わらせていただいたことは、大変貴重な経験となりました。様々な雑誌や書籍の分担執筆を通じて、自身の知識を整理し、分かりやすく伝える訓練も積みました。論文執筆においては、胃癌治療において世界的に著名な設楽先生にご指導いただき、胃癌関連の論文を2本( “Prognostic and predictive factors for the efficacy and safety of trastuzumab deruxtecan in HER2-positive gastric or gastroesophageal junction cancer.” Gastric Cancer. 2025;28(1):63-73.、”Prognostic Indicators of Preoperative FLOT Efficacy in Locally Advanced Gastroesophageal and Gastric Cancer: Integrating Biomarker Analysis and Clinicopathological Factors.” JCO Precision Oncology. in press)執筆させていただきました。この他にも、食道癌に関するReview論文(”Current landscape of targeted therapy in esophageal squamous cell carcinoma.” Curr Probl Cancer. 2024;53:101152.)を執筆させていただき、また胃癌のトラスツズマブデルクステカンに関するReview論文を現在投稿の準備をしているところです。

 

 

この3年間で、がん診療に携わる医師として、多くのことを学び、成長させていただきました。最先端のがん医療に触れる機会、研究・執筆活動を通じて知識を深め、発信する経験、さらに全国から集まる志の高い同期レジデントや先生方との出会いは、私の財産となりました。
長崎大学に戻り、これまでの経験を活かし、消化器内科医として、がん診療に携わる医師として、より一層精進してまいりますので、今後ともご指導ご鞭撻を賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。
末筆ではございますが、医局員の皆様の益々のご健勝とご活躍を心よりお祈り申し上げます。

 

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